星野・醍醐研究室

橋梁などの大型構造物、自動車をはじめとした輸送機械、発電プラントなどの産業機械など、人類の豊かで安全な生活を幅広く支える基盤材料は、より持続可能な形態での生産・消費が望まれます。それは、生産プロセスの低環境負荷化だけでなく、材料の高機能化による使用段階での製品の高効率化や、使用済みとなった後の高リサイクル性も求められます。
基盤材料マネジメント工学講座では、基盤材料のライフサイクルを通した評価、社会全体での評価により、持続可能な基盤材料の生産・消費・リサイクルを実現するための技術システム開発ならびに政策提言を目指しています。

そのために大きく3つの研究テーマを展開しています。

持続可能な基盤材料リサイクル
基盤材料の1つである鉄鋼材は、その使用量の多さから、使用済みとなった後の高リサイクル性が求められています。そして、実際に、リサイクル性が優れており、社会中で何度もリサイクルされています。一方で、何度も使用済み製品からリサイクルしている間に、他の素材に由来する不純物がトランプエレメントとして鋼材中に濃化することが危惧されています。当研究室では、繰返しリサイクルによる不純物の動態を分析し、トランプエレメントが濃化しないリサイクルシステムの構築を目指しています。

国内外でのフィールド調査



持続可能な基盤材料選択
人類の豊かで安全な生活を幅広く社会を支える基盤材料は、より持続可能な材料によって構成されなければなりません。資源によっては経済的枯渇が危ぶまれたり、採掘に伴う現地環境の破壊を伴ったり、資源消費によって誘発される負荷の低い材料を選択していく必要があります。しかし、材料ごとの持続可能性を評価するアプローチは、未だ確立されていません。材料は、それを天然資源から生産するときに消費する資源、その生産プロセス、他の素材と組み合わされて最終製品となり、使用済みとなった後は他の素材から単体分離されて回収されます。そのライフサイクルでの様々な異なる観点を考慮した評価手法が望まれます。当研究室では、ライフサイクル思考に基づき、資源のクリティカリティ評価、他素材との素材間の相性、リサイクル性評価など、様々な手法を発展させて、人類の持続可能性をより明瞭かつ公正に評価できるアプローチを開発しています。

製品ライフサイクルの概念図




社会における基盤材料の価値
基盤材料は、古くより生産されている材料は多いものの、さらなる高機能化のための技術開発が進んでいます。材料の高機能化は、持続可能な将来社会のためには必須です。例えば、先進国では、1人当たり約10トンの鉄鋼材が物質ストックとして社会中で使用されていることで、今のインフラなどは充足していると考えられています。しかし、重量での評価では、材料の高機能化は反映されません。そこで、材料は消費時ではなく、その使用時に機能を発現していることから、使用中の材料である社会中のストック量に着目し、その提供している機能を定量することを試みています。ただ、各材料に求められる機能は複数あることが一般的であり、それら複数の機能を考慮しながら総量を導出するのは、とてもチャレンジングな取組みです。より小さな資源消費で、より大きな価値(機能)を提供することこそ、資源効率の向上であり、この取組みが資源効率の分子の定量となります。

物質ストックが社会に機能を提供している概念図